カルテット 8話

本日最終回を終えたカルテット。今季1番好きなドラマだった。登場人物の会話だけで物語が進んでいくその様は1秒たりとも見逃せないとても面白いドラマだ。中でもわたしは第8話が大好きだ。片思いがテーマの第8話。こんなに心が動いたドラマには初めて出会ったぐらいに思う。だから記しておきたい。

 

物語は4人がワカサギ釣りをするところから始まる。ドーナツホール、そう、丸い穴から獲物を狙うワカサギ釣り。細かいところまで演習が美しい。

ここで4人は話題に困り、まきさんが夢の話を始める。続いてすずめちゃん、別府さんも自分が見た夢の話をする。自分が寝ているときに見た、夢の話を。そして家森さんは言う。

人の夢の話を聞かされて、なんと答えますか?そう、「へぇー」。それしか言えないの。生産性のない話をしないで。

人の夢の話を聞いてもそこからは何も生まれないと言う。へぇー、しか生まれないと言う。

 

この後、すずめちゃんが別府さんを好きだという展開がなされていく。しかし、別府さんはご存知の通りまきさんが好きだ。だからすずめちゃんは好きな人と、好きな人の好きな人が上手くいくようにと願う。

バイトの面接帰り、スーパーで柔軟剤を購入する。その柔軟剤を使って洗濯をして、別府さんのパジャマの匂いを嗅いで笑顔になる。別府さんへの好きが描かれているのかと思いきや、実は違う。お風呂上がりの別府さんの匂いを嗅いで少し笑顔になるまきさんを見てすずめちゃんはまた笑顔になるのだ。みんなで行ったお参りもきっと別府さんとまきさんの両思いを願っていることだろう。別府さんの幸せを願っているのだろう。

 

ナポリタンを食べるときとか、下りのエスカレーターに乗るときとか、ここにね、いるの。好きだってことを忘れるくらいの好き。

すずめちゃんはこんな風に言う。別府さんへの気持ちを好きだってことを忘れるくらいの好きだと言う。この前にすずめちゃんはいつも飲んでいるコーヒー牛乳のことも好きなこと忘れてたと言っている。そういう、好き、なのだろう。

バイト先でもらったピアノのコンサートのペアチケット(コンサート名は"夢"であった)を「ピアノの音を聞くと眠くなるから2人で行って」と好きな人と、好きな人の好きな人に譲る。自分の感情を押し殺しているのを知っている家森さんは「僕が行くよ」と少し意地悪に見える優しさを見せる。そしてすずめちゃんの鼻についたクリームを拭こうとして別府さんが差し出したティッシュで鼻をかむ。空気が読めないと思われがちなこの行動は誰よりも繊細な家森さんの優しさである。人から言われて気付いたことだが、家森さんは紫式部(高級ティッシュ)でしか鼻をかめない。そんな家森さんが何でもないティッシュで鼻をかみ、別府さんの無意識の優しさからすずめちゃんを守る。なんて繊細なんだろう。

 

そしてこの後、家森さんはこんなことを言う。

両思いは現実 片思いは夢

すずめちゃんは別府くんとまきさんが上手くいくのを見ているのが嫌なだけ

この話に対するすずめちゃんの相槌は「へぇー」だ。夢の話だからだ。片思いという夢の話を聞かされて返す言葉はもちろん「へぇー」なのである。

 

コンサートの日、すずめちゃんは残業をする。眠くなるのがわかっているのにコンサートの上演時間に合わせてピアノの音楽をかける。そして眠りに落ちる。

ナポリタンを食べるときエプロンをかけてくれる別府さんにときめくすずめちゃん。下りのエスカレーターに乗るときにせーのと踏み出す相手は別府さん。そして今日のこのコンサートに一緒に行く。そんな夢を見る。

そう、夢なのだ。すずめちゃんが見る別府さんへの思いは、好きは、片思いは、この回の中では全て夢の中で起こっているのだ。たまげる。素晴らしく、美しい、この上ない片思いの描写だ。

 

眠りから覚めて家に帰ってくると家森さんがたこ焼きを買って来てくれる。2人で食べながらSAJの三段活用の話をする。ここがまた会話の"間"が恐ろしく良い。絶妙である。SAJの解説をする為に家森さんはすずめちゃんに告白をさせる。

すずめ「…好きですっ」

家森「……………ありがとう」

本当はありがとうではない。家森さんはすずめちゃんが好きなのだ。だからこれだけの間が生まれる。SAがわかったところでではJとは何だろう?という話になる。だから今度は家森さんが告白をする。

家森「好きです」

すずめ「ありがとう」

家森「………………………冗談です」

今度、すずめちゃんは間髪を入れずにありがとうと言う。全く迷いがない。好意がないということだ。それに対しまた凹む家森さんがとてもかわいい。そしてこの間だ。さらに加えて

そうやって、好きをなかったことにして生きてるの と言う。家森さんそのままである。

 

一方別府さんとまきさんはコンサートの帰り道、たこ焼きを買う。そのたこ焼き屋の亭主が家森さんの話をする。さっきの兄ちゃんも片思いって言ってたよ と言って笑いながらたこ焼きを詰めてくれる。そんな亭主に2人は声を揃えて「へぇー」と言う。やはり、片思いはいつまでも、どこまでも、夢なのだ。

 

すずめちゃんの想いにのせて別府さんとまきさんの話が展開していく。しかし大事なことは家森さんが言っている。伏線は家森さんが張っている。誰が欠けても成り立たない、4人で1つの物語、まさに四重奏。カルテットである。

 

片思いと夢がテーマの8話が大好きだ。テーマ自体もストーリーの秀悦さも込みで、大好きだ。ドラマのこの回が好きだなんて初めての感情に近い。素晴らしいドラマに出会えたと思う。火曜10時は素晴らしい。もうこの時間に4人に会えないと思うと寂しい。どうか4人がこの先、幸せな人生を歩んでいけますように。そう願っている。